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横浜市立大学の川浦康至先生のチームが訳された,インターネット心理学の草分け的な本.本書ではp.142に引用されているのみだが,本書と同様,それまでのインターネット心理学の業績が広汎にレビューされている.本書を購読もしくは検討中の方で,この本を未読の方には,是非とも併読をお薦めする.インターネット上の人間行動のポジティヴ・ネガティヴな側面や,そこでの心理学的なトピックについて,より幅広い知識と考察を得ることができるだろう.
この本が本書の弱い側面を補う点としては,バーチャル空間での集団相互作用の強調や,「社会的共有地問題」や「批判的思考」などの,インターネット社会への視点が挙げられる.一方,本書はこの本と比較して,メディアとしてのインターネットの位置づけ,アイデンティティ理論との関連や利用者の戦略的な技術利用を強調する視点,より新しい話題(NWM事件など)が含まれている.
本書とは実例の部分で重なっているところが多い(トンプソンとフォールガーのフレーミング実験(第3章)やMooでの事件(第4章)など)ので,翻訳作業中に最もよく参照した文献となった.もちろん,意地でも同じ訳文にならないように(^^;注意を図った.
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本書と版元が同じ&関連が深いので紹介.本書が訳書である関係上,どうしても参照される文献が欧米のものに偏ってしまうキライがあるが,インターネット心理学は本邦においても活発に研究されているということを知るためには,この本は他にない良書となっている.
第2章では,インターネット社会における意志決定の問題について,従来の意志決定理論の適用と,その限界点ならびに超克すべき論点について述べられている.第3章では,自己表現のためのメディアとしてのインターネットに焦点を当て,“ホームページ”や“ウェブ日記”による自己表現の例とその動機づけについて分析している.第5章では,インターネット上の人間行動と心理に関する問題意識と,日本・海外における従来の研究についての簡潔なレビューが為されている.
本書ではさらに(というか,全体としてはそっちがメインの内容かもしれないが),その他のメディアに関する社会心理学的な研究の概要と,人間が様々な情報をどのように受け入れ,処理し,行動しているかに関する多くの議論を得ることができる.
なお,本書の書評を訳者(三浦)が「社会心理学研究」第17巻第2号(2002) p.109-110 に執筆している.
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お茶の水女子大学の坂元章先生のチームによる,インターネット上の人間行動を社会心理/教育心理/臨床心理学的に研究した結果の報告集.日本におけるインターネット心理学研究の最先端の成果を示したものであり,なおかつどのような方法を用いてインターネットを“心理学的に”研究していくべきなのかを指し示す良書となっている.
本書の他,インターネット心理学の本にはレビューや「社会を変えるメディアとしてのインターネット」の視点から書かれたものが多いのに対し,この本は研究・実践結果の報告が主体となっている部分が特徴的である.これからどのようにインターネットを研究していけばよいのかを知る指針をつかむには,非常に有効であろう.一方,研究者以外の一般読者にとっては,内容が高度に専門的であるため,難解すぎるきらいがあるかもしれない.