日本社会心理学会第51回大会ワークショップ(WS06)
研究知見の社会還元はどうあるべきか?―社会と社会心理学の微妙な関係―

登壇者

企画者 平井啓(大阪大学)@keihirai三浦麻子(関西学院大学)@asarin
司会者
(ファシリテイター)
平井啓(大阪大学)
話題提供者 平井啓(大阪大学)・三浦麻子(関西学院大学)
指定討論者 西田公昭(静岡県立大学)@nishidak0705藤島喜嗣(昭和女子大学)@gsd9720
Twitter ハッシュタグ #spws6

企画趣旨と概要

 社会心理学は、社会的文脈における人間の心理・行動について実証的な心理学的法則を解明する事を目的としている。このため現代の社会心理学者の多くは、社会的文脈からのデータ収集とその理論化を中心として活動している。一方で、社会心理学の外から視点では、社会心理学によって創り出された心理学的法則がどのように社会的文脈に還元されるのかに関心が持たれている(Fig.1)。近年のこうした流れの根幹は、社会心理学にかぎらず科学技術やアカデミア全体が、社会から説明責任や社会還元といったものを要求されていることと共通している。
 本来、科学とは、現実に起こっている現象を抽象化し、そこから法則を発見することを旨としている。社会への還元とは、発見した法則を現実の世界へ適用し、なんからの変化を生じさせるという円環を完成させる営みである。これに対して社会心理学として、社会からの要求に十分に答える、あるいは先に述べた円環を完成させる研究成果を示すためには何ができるだろうか?


Fig.1 科学・社会還元と社会心理学

 そこで、本WSでは、社会心理学から社会への働きかけの戦略を作り上げるディスカッションの場を設定する。そのための資料として、まず、現在の社会心理学の分野で行われている研究の全体像を把握するために主要誌に掲載された論文をテーマと方法論の観点からレビューし、その結果を報告する。さらに図の円環の下段にあたる法則の適用の部分について、そのあるべき方向性を探索するため、他分野から求められる社会心理学研究とは何かについて調査を実施し、その結果を報告する。これら2つの資料をたたき台として、指定討論者の二人にはそれぞれ実際に社会問題に関わっている立場から、実験室実験を主に用いている立場からの批判をお願いする。最終的に、社会心理学から社会への働きかけのあるべき姿について、参加者全員によるブレーンストーミングを行い、戦略案をまとめてみたい。



調査:単純集計結果

 ワークショップ実施にあたり,2つの質問紙調査を行いました.いずれも内容は社会心理学のさまざまな研究テーマの学術的重要性と社会的必要性に関する設問を中心とするもので,対象は(1)企業管理職・心理学以外の研究者(20〜59歳)(2)日本社会心理学会の会員です.前者は「社会の声を聞く」マーケティングリサーチ,後者は社会心理学者たちの現状認識を問うものという位置づけです.

 特に,調査(2)において,日本社会心理学会の会員である多くの方々に貴重なお時間を割いてご協力をいただきました.心から御礼申し上げます.ごく簡単な集計結果を以下のようにまとめました.ご参照ください.

調査(2)「社会心理学者たちの声」

 ワークショップでは両者の結果を対応づけながら話題提供を行い,またすべての当日資料は終了後に公開します.




MIURA Asako